Chika Higashi
Works

コシラエルのハンカチーフ

コシラエルのハンカチーフ

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娘(8歳)と電車に乗った

私たちの前を娘と同じくらいの年の女の子が改札を出る

”ピヨピヨピヨ”

子供が通ったという合図が鳴る

世の中ズルしないようによく出来ているものだわ。

ふと彼女が持っているICカードは、大人用で私が使っていたものだと気づく。

彼女は電車に乗るたびに大人料金を払っていた改札に座る駅員さんのところへ行った・

どうしたらよいか尋ねると、子供名義にかえればよいと教えてくれる。

 駅員さんから、「お子様の身分証になるものはお持ちでしょうか?」と聞かれ

私は生憎持ってないと伝える

すると、一部始終を隣で聞いていた娘が答えた

「ハンカチなら持っています」と。

ぷっと、笑ってしまった。

変な子だな。可愛いこというなあ。と。

私は駅員さんに「また出直してきますね」と言って一礼して後にした。

乗り換口を探し、エレベーターに乗る。

さっきの一言を思い出して、繋いでいる娘の手を揺すりながら

「ねえ、さっきのどうしてハンカチだったの?」

すると意外に真面目な表情で説明してくれた

この前、図書館で貸し出しカードを無くした時、

自分の名前がわかるもの見せてくださいと言われ

自分の名前が書いてあるハンカチを見せたら

それで、自分が自分であることを証明できたのだそうだ

自分は誰か。

わたしは わたしである。

当たり前のことをいちいち証明しなきゃなんて、

法的に、第三者に絶対そうです!と認めてもらわなきゃいけないなんて

大人の方が子供みたいだ

自分のハンカチが身分証明になる

素敵な世の中だ。

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ハンカチ ハンケチ ハンカチーフ

ハンカチの待機場所

ポケットの中 カバンの中

彼女のこぼした口元へ

あの子が洗った手を

さっと差しだせるように

ハンカチに頼もう ハンカチらしいお仕事を

   

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ハンカチの遊び方

ワンピース

おっぱい

リボン

ねこ

   

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四角はハンカチ

ハンカチは四角

床の牛乳拭くのには付き合えないの

お高くとまっているわけでもないのよ

わたし

ハンカチーフ

   

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わたし

ハンカチーフ

はんぺんみたいにおでんの汁に浮かべない

折り紙みたいにぴっしり直線を真面目に言えない

焼き海苔みたいに美しい光はない

スカーフみたいに優雅に踊れない

直角二等辺三角形がふたつみたいに精密な性格ではない

ガレットみたいに熱々の卵を乗せられない

できないことが多い四角いわたし

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_MG_6332   _MG_6345     お芝居を観に行った ぐぐっと喉の奥がこみ上げてポロポロと目から涙がでてきた 隣にいた娘がハンカチを問いr出して顔を舐めるように 涙を拭ってくれた   お芝居が終わる 彼女はいつもハンカチを持っている いつもちゃんと ハンカチを持っている人は 偉いと思う どうしてそう思うんだろう   あの日のお芝居は心の中で小さな渦になってわたしの中にまだ居残っている      

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  写真:藤田慎一郎

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